なぜかわかりませんが

なぜかわかりませんが書きたくなった事を書いていくみたいですよ

【黒龍の棺】北方謙三流ハードボイルド新選組!

 

黒龍の柩 (上) (幻冬舎文庫)

黒龍の柩 (上) (幻冬舎文庫)

  • 作者:北方 謙三
  • 発売日: 2005/10/01
  • メディア: 文庫
 

 

 

黒龍の柩 (下) (幻冬舎文庫)

黒龍の柩 (下) (幻冬舎文庫)

  • 作者:北方 謙三
  • 発売日: 2005/10/01
  • メディア: 文庫
 

大胆な新解釈!

ヒマなんです。

このコロナ渦の中…ていうか私実は転職の為に会社辞めてまして、この4月は全て有給消化に充ててるんですね。

本来なら、クルマで気ままに一人旅でもしようかとか事前には色々野望を抱いていたんですけどね。なぜこのタイミングで自由に外出もできない状況に陥るのか。それともこれは、世間の混乱に巻き込まれずにこれからの準備をしなさいよという神様の思し召しなのか。

考えつつも、休校で子供二人も家にいるので開き直って主夫してます。

これはこれでいいのだ(^^)

 

まぁそんなわけで読書に勤しんでる毎日ですが、本日読破したのはこちら。

北方謙三先生の新選組黒龍の棺』です!

 

文庫本は上下巻とも450P前後と、中々の長編になっています。

僕は読書好きですが読書通ではなく、北方謙三氏の作品を読むのは初めてでした。

ハードボイルド作家、というイメージだけはあったのですが読んだ事の無い作家の本を読む時って独特の「構え」をしてしまいますよね (笑)

でも、心配は無用でした。それどころか男心をくすぐる表現の連続で一気にファンになってしまいました!

 

さてさて、では内容です。

本書は、唐突に「池田屋の変」から始まります。

新選組結成のあらましはあえて省略されている感じですが、問題ありません。

簡単に言うと、その池田屋から最終的には箱館旧幕府軍が降伏に至るまでを背景に新選組副長・土方歳三をド真ん中に据えて斬新な新解釈を元に漢たちの生き様を描き切るという、正に「幕末ハードボイルド小説」ですね。

 

土方歳三をメインにして新選組と時代の移り変わりを描くという意味では、僕のバイブルである司馬遼太郎『燃えよ剣』とよく似ています。ですので、わくわくしながら読み進める事ができました。

 

しかし上記の新解釈というのが、まぁ計算され尽くしていて面白い。

 

まず前半では、よく険悪な間柄を描写される土方歳三山南敬助を「熱い友情で結ばれた二人の漢」として描いています。

作中、二人の間には無数の「会話」が繰り広げられるのですが…。

この、激動期に生きる漢二人の「会話」というのがとにかくカッコいい!

セリフは完全に現代語ですので時代劇っぱさはまるでありませんが、これは割り切りと取っていいでしょう。この方が「漢の交わす会話」として入ってきます。

それにしても、山南敬助を土方の良き同胞としてここまで昇華させた着眼は見事でした。最終的に切腹に至るまでの経緯も破綻する事なくしっかりとした理由付けがされており、しかもそれがまた泣かせるんです。

 

山南は死後も土方に強い影響力を持ち続けます。

事あるごとに、「山南が生きていたらどうしたか」を考える土方。

そして土方は、山南が残した「謎」の正体を追い求め、勝海舟小栗上野介らと交わっていきます。そこには坂本龍馬の「新国家構想」を軸にした壮大な「夢」が待ち受けていたんですね。

 

後半では坂本龍馬の描いた「新国家構想」を元に主要人物たちがそれぞれの想いに忠実に駆けていくわけですが、北方流脚色の徳川慶喜が影武者を駿府に置いて北へ向かって逃避行を繰り広げる下りは本当に緻密な設定がされており、「これが史実か!?」と思わせてしまう説得力があります。

手に汗握る逃避行。必見です。

 

あ、あと歳三の江戸での最後の日に用意された「ヤツ」との大立ち回り。

超カッコいいっす。

 

伏線は最初から

舞台が北の大地に代わると、何となく最後に待ち受けるどんでん返しを事前に想像させるような描写がちらほらと出てくるのですが、その伏線は物語の最初から用意されています。

最新刊ではないとはいえネタバレになるので詳細は省きますが、個人的には「アリ」のどんでん返しを最後の最後に配置して、余韻を抱かせたまま物語は完結となるんです。

 

これが本当だったら、その後どうなったのかなぁ…。

 

歴史を語る上で、百人百様の「たられば」があると思います。

この物語に限らず誰しもが思う「龍馬が生きていたら…」はもちろん、「小栗が生きていたら…」「近藤勇が一緒に蝦夷に来てくれたら…」「甲鉄が手に入っていたら…」などなど、色々な事を妄想してしまいます。

 

幕末。

やはり、とても興味深い。

 

西郷の描写

で、幕末と言えば2018年の大河ドラマで再ブレイクした西郷吉之助です。

しかーし!

この作品では、作者が西郷に恨みでもあるのかというくらいに最悪の悪者とされています。

西郷命の人は読まない方がいいかもしれませんね。とにかく陰湿で肝の小さい男として、暗ーく描写されているんです。

なので、読んだ後には上記の「たられば」に「西郷がもっと器の大きい人間だったら…」も加わってきますね。

大河ドラマ含め、一般的には器の大きい怪物として認識されている西郷さんですがこれを読むとわからなくなります。実際はどうだったんでしょうね。気になります。

 

というわけで、この長い休みにまず読み終わったのが「黒龍の棺」でした。

こういう小説を読むと「京都行きたい!」となり、また僕個人にとってはチャンスなのですが今は外出ができない…歯がゆいですな。

 

みなさんはどういう本で余暇を過ごされているんでしょうか。

僕は「黒龍の棺」を読んだ上で、また「燃えよ剣」を読んでみたい衝動に駆られています。映画もやるしね!

 

 

燃えよ剣 全2巻 完結セット (新潮文庫)

燃えよ剣 全2巻 完結セット (新潮文庫)

 

 

 

ありがとう!