【思い出のダービー】~ジャングルポケット~愛すべき21世紀最初のダービー馬
ダービーウィーク
さて、今年もこの日がやってくるんですね!
サラブレッド3歳世代の最高峰レース、第88回東京優駿こと日本ダービーの日曜日がっ!!
最近はツイッターばかりで全くブログの更新をしておりませんでしたが、やっぱりダービーを迎えるに当たっては色々と思う事があります。
昔、僕は競馬場に入りびたりでした。なんて言うとギャンブル狂みたいでネガティヴな言い方ですが、単純に競馬が楽しくて節度を守って遊んでいたという形です。
しかしことダービーとなると中々観戦の機会が無く、競馬を始めて10年以上経った2001年に初めて現地観戦する事ができました。
今回はその思い出を綴ってみたいと思います。
2番手の男
この年の3歳世代には、皐月賞までは絶対的な存在がいたんです。
光速を超えると言われる仮想の粒子『タキオン粒子』から授かったその名に恥じない素晴らしい血統と競争成績を誇る名馬です。
デビューから皐月賞まで4戦無敗で突き進んでいたこの栗毛は、大いに期待されたダービーを迎える前に屈腱炎を発症。ファンを失意のどん底に突き落とし、早々にターフを去っていきました。
かく言う僕もどん底に落ちた一人です…
本っ当に残念な出来事でした。
しかしそれでもダービーはやってきます。
押し出されるように主役に祭り上げられたのは、2頭の重賞勝ち馬でした。
毎日杯で重賞制覇後にNHKマイルカップでGⅠの勲章をGETし、まさに浦賀来航のペリー艦隊のごとく意気揚々とダービーに挑戦してきました。
芦毛という毛色もあって、既にアイドルホースとして人気がありましたね。
そしてもう一頭がジャングルポケットです。
クロフネともども前年暮れのラジオたんぱ杯(GⅢ)でアグネスタキオンに一蹴されていましたが、札幌3歳S・共同通信杯とGⅢ2勝を引っ提げてタキオン不在のこの舞台でトップに昇り詰めるべく虎視眈々という状況でした。
僕はタキオンはもちろん、この2頭も大好きでした。
2頭のこの後の大活躍にも大喜びした覚えがあります。
そんな中、僕が本命に据えたのはジャンポケの方でした。一番人気でしたね。
この馬も父トニービン産駒によく出ていた特徴を色濃く持っていたからです。
古い競馬ファンの方ならおわかりの通り。
トニービン産駒は、東京専用の直線番長という傾向が強かったんですね。
そしてジャンポケ自身も既に東京1,800mの重賞、共同通信杯を勝っています。
トニービンの産駒はよく走り、9頭がGⅠを勝っています。そして、その全てに東京のGⅠが含まれているんです!!
- 1990年産
- 1991年産
- 1993年産
- 1998年産
- 1999年産
どうですかこの偏向っぷり。
全てに東京のGⅠが含まれるというより、GⅠ全13勝中11勝が東京のレースという徹底ぶりです。スゴイですよね。
またトニービンは凱旋門賞馬であり、産駒の2,400mの実績も十分。
マイラー色の強いクロフネを抑え、ジャングルポケットが一番人気に支持されたのも当然だったと思います。
『タキオンがいれば…』という声がスタートの瞬間まで聞こえていた、2001年の日本ダービー。そんな声に嫌気がさしたか、ゲート内でノーザンポラリスくんが反抗するように立ち上がりますが構わずスタートが切られました。
「2番手の男決定戦」
そんな雰囲気を断ち切るべく、18頭は走り始めました。
ダービー馬の称号
さて、容赦なく切られたスタートはイヤイヤしていたノーザンポラリスが出遅れ。
外目から和田騎手のテイエムサウスポーが内に切れ込み、果敢に逃げを打ちます。
ジャンポケとクロフネは共に中団。クロフネがジャンポケを見ながらチャンスを伺うような体勢です。
2コーナーから向こう正面に掛かると、和田テイエムは思い切った大逃げに入ります。
後続との差は徐々に広がり、1,000m通過は58.4秒のハイペース。そのまま飛ばし続けるテイエムをはるか遠くに見ながら、3コーナー手前でなんとジャンポケより先にクロフネの方が動きました。
これはちょっと予想外でした。距離に不安のあるクロフネは直線に賭けるものだと思っていたからです。
しかし考えてみると、東京得意でスタミナにも問題無いと思われるジャンポケを後ろから差すのは難しいと武豊騎手は判断したのかもしれませんね。距離が持つかどうかは走り切らなければわからない、そんな中で「勝ち」を狙うなら早めに仕掛けてゴールまで凌ぎきる方が可能性があると思ったのかなぁと後になって想像しました。
そんな攻防の中、先頭のテイエムは3コーナーを過ぎても8馬身ほどのリードを保ったまま4コーナーへ向かいます。しかしもう脚が残っていないのはTV画面でも明らかで、ただ走っているだけの状態です。そんなテイエムに4コーナーで後続が一気に襲い掛かり、飲み込んでいきました。
そして、道中と逆にクロフネが前に位置取ったまま東京の長い直線を迎えました。
人気の2頭が直線の外目を追い比べしながら上がってきます!場内の興奮も最高潮に達し、大歓声が沸き起こりました!
しかし坂に掛かると、クロフネの脚がついに止まります!距離の限界を迎えた止まり方です。あぁ、これは大敗だ…と皆が視線をもう一頭の主役の方に移しました。
そうです、もがくクロフネを尻目にその外を悠々とかわしていったのはジャングルポケットとダンツフレームでした!
力強い足取りで坂を駆け上がり、ゴールまで一直線のジャンポケ。ダンツフレームは差を縮める事ができず、必死で食い下がります!
その少し後方で、いったん馬郡に沈むと思われたクロフネが意外に粘っています。
惨敗かに見えた止まり方でしたが、坂を上がり切って少し息を吹き返したクロフネは最後の力を振り絞って遠くなったジャンポケの背中を追います!
しかし、大勢は既に決まっていました。
クロフネの5馬身半ほど前で、ジャングルポケットは栄光の68代ダービー馬の称号を手に入れてみせたのでした!
完勝、と言える内容でした。
この舞台なら、このメンバーで何度やっても恐らくジャングルポケットが勝つだろうと思えるくらいの危なげない勝ち方でしたね。
そうです、彼は間違いなく68代ダービー馬となったのです。
走る事さえ叶わなかったアグネスタキオンには、どうあがいても手にする事のできない栄えある称号をジャングルポケットは手に入れたのでした。
雄叫びの先
文句の無い勝ちっぷりでダービーを制してみせたジャングルポケット。
ウイニングランでスタンド前に戻ってくる彼を、大歓声が迎えます。
あまりの歓声に驚いたのか、顔を上げて天に向かって雄叫びを上げるような仕草を見せるジャンポケ。それを見て、より一層盛り上がってしまう東京競馬場の大スタンド。
しかし、僕は一緒に観戦していた友人に言いました。
『あいつ、アグネスタキオンを呼んでるんだ!』
『俺ともう一回勝負しろって、タキオンを呼んでるんだ!』
友人も、そうだな!違いないな!と盛り上がってくれました。
だって、僕には本当にそう見えたんです!
きっとジャンポケ自身が一番よくわかっていたはず。
アグネスタキオンに負けたまま、タキオン不在の舞台で勝っても真のナンバー1とは認めてもらえないという事を。
勝ったけどよ、アイツがいねえじゃねえか!
彼はきっと、やり場の無い気持ちを遠い地に向かってぶつける為に吠えていたんだと僕は今でも信じています。
↑サムネイルで既に吠えていますwww
それぞれの道へ…
ともあれ、ダービーを取ったジャングルポケット。
秋は2冠奪取を目指し菊花賞に出走しますが、後に春天も制するマンハッタンカフェの4着に敗れます。
そして気を取り直して挑戦したジャパンカップで、3歳の身ながら優勝をもぎ取ってみせるのです。そう、彼が120%の力を出せる「東京の2,400m」が舞台でした。
このレースは2着テイエムオペラオー、3着ナリタトップロード、4着ステイゴールドという錚々たるメンバーでした。現地で観戦していましたが、これでアイツも少しは胸を張れるかな…と安堵したのを覚えています(^^)
惜しむらくは、改修工事の影響でその後東京で走る機会に恵まれないまま故障で引退してしまった事ですね。秋の東京で、もう一度暴れさせてあげたかったです。
そして、クロフネ。
彼の秋以降の活躍は説明するまでもありませんね。
ダートに転向後、世間を恐怖のどん底に突き落としました(笑)。
こちらも惜しむらくは、これからという時に故障を発生し海外遠征も叶わなかった事ですよね~。
でも大好きでした!
冒頭のジャンポケの記念馬券同様、ダービーの単勝を今でも持ってますよ。
先日(2021年1月17日)、亡くなってしまいましたね(T^T)
この馬券は大事な形見になりました。
最後に、アグネスタキオンですね。
競走成績同様、種牡馬としても大活躍しました。
代表産駒は、やっぱり名牝スカーレットブーケとの間にもうけたダイワスカーレットですよね~。
いや、彼女はめっちゃくちゃ強かったですよ!僕の中では、ウォッカより上です。
あの天皇賞(秋)も、絶対スカーレットが勝っていたと今でも思っています。
今だ「最強世代」と呼ばれる事も多いこの世代の、この3頭。
3頭とも種牡馬となってそれぞれ何頭かのGⅠ馬を送り出し、成功を収めました。
ですが、後継種牡馬となると何とも寂しい現状ですね…彼らの血が父系として残らなくなっていきそうでやるせない気持ちです。
タキオンは早逝してしまったし、ジャンポケも今年3月に亡くなってしまった事で3頭とも鬼籍に入ってしまいました。
ジャンポケはタキオンを追い回しているのかな。タキオンは笑いながら逃げ回って、だけど絶対捕まえられないみたいな。その横でクロフネが、たまにはダート走ろうよーってイジけてそう(笑)。
さて、思い出はここまでにして今週です。
エフフォーリアが一番人気でしょうね。共同通信杯や皐月賞の内容からしても、2年連続無敗の2冠馬誕生の可能性はかなり高いと思います。
超良血のエピファネイアを父に持ち、サンデーサイレンスのインブリードを秘めています。もしかしたらバケモノかも…。
メジロライアンで涙に暮れた父典弘と奇しくも同じ22歳で一番人気のダービーを迎える横山武史騎手。最内枠が少々気になりますが、東京なら大きな問題にはならないでしょう。がんばってほしいですね。
では、胸を躍らせながら日曜日を待ちましょう♬
ありがとう!
#クロフネ