【思い出の有馬記念】1993年:トウカイテイオーの起こした奇跡
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仕事、忙しいです。
全然ブログの更新ができませんでした。
休みの日もグデーッと休息に充てていた事もあり筆不精でしたが、今週は何と言っても「有馬記念」が行われます!
ホープフルSのGⅠ昇格に伴い一年の締めくくりレースではなくなりましたが、師走の最大イベントである事に変わりはありません。
僕の30年に渡る競馬観戦の中で、多くのドラマを見せてきてくれた有馬記念。
最後の力を振り絞ったオグリキャップの激走。
その品格を見せつけるかの如く見事有馬記念も制してみせた三冠馬たち
(ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴル、ジェンティルドンナ)。
史上ただ一頭、年間グランドスラムを成し遂げたテイエムオペラオー。
枚挙に暇がありません。
そして。
僕が今までで最も愛した馬と言える唯一無二の存在。
トウカイテイオーです。
彼が、大ファンだった僕でさえ諦めていた復活をこの大舞台でやってのけた1993年。
ビデオで、DVDで、上にあるようなYoutubeで…冗談抜きで100回以上このレースを見てきました。
そして、その度目を潤ませてくれます。
彼自身が成し遂げた復活劇ではあるのですが、このレースを語るに不可欠なのが…
・堺正幸アナの「魂の叫び実況」
・田原成貴ジョッキーの「涙の勝利ジョッキーインタビュー」
はい、冒頭のYoutube動画はこれらをノーカットで見る事ができる貴重な当時の番組のVTRです。
色々あって(- -;) 競馬界を離れる事になった田原元騎手ですが、当時の競馬ファンであれば「田原が泣く」という事自体が結構な出来事でしたよね。
田原元騎手を泣かせたトウカイテイオーの走りとはどういったものだったんでしょうか。
僕なりの見方で、語ってみたいと思います。
一年ぶりのレース
僕は信じています。
骨折さえ無ければ、トウカイテイオーは間違いなく三冠馬の一頭に名を連ねる事になったはずの馬です。
父シンボリルドルフに続いてダービーで無敗の二冠を達成した時の歓喜から一転、骨折判明のニュースで僕は真っ暗闇に突き落とされてしまいました。
その後も彼は骨折との闘いが続きます。
脚の関節が異常に柔らかく、ぴょんぴょんと跳ねるような歩様を見せる馬でした。レースを見るとわかりますが、走っている時も他の馬と明らかに違うフットワークをしているんです。
脚を地面に叩きつけ、その反動を推進力にしているような。文字通り、「バネの利いた走り」ってやつです。いや、利きすぎてスキップしているみたいでした。
もしかしたら、その走りが脚に与えるダメージが大き過ぎたのかもしれませんね。
前年、1992年の有馬記念では前走ジャパンカップでの劇的勝利が買われて一番人気に支持されますが、直前に飲んだとされる虫下しの影響で体重が10kg減って体調不良であった事に加えてスタート時に脚を滑らせ筋肉を痛めたという影響もあり11着に沈みます。
その後も骨折を発生し、結局この有馬記念が一年ぶりの復帰戦となりました。
ファン投票で出走馬を決める有馬記念です。出走できた事がファンの多さを物語っています。
しかし、一年の総決算であるグランプリです。決して簡単に勝てるレースではありません。
しかも出走他馬は順調にレースを使われてきた歴戦の強者ばかり。中でも三歳馬代表ビワハヤヒデは、かつてテイオーをJC勝利に導いた岡部騎手を鞍上に菊花賞を5馬身差で圧勝してみせた一番人気馬でした。
その力は認めても、骨折休み明け一年ぶりの「ロートル」であるテイオーが4番人気に甘んじたのも無理も無い事でした。
真の力
そんな状況の中、田原騎手も「とにかく今回はテイオーのペースで走って力を出し切る」という事に専念する気持ちでレースに臨みます。
スタートが切られました。
ダッシュ自慢の逃げ馬メジロパーマーを除けば、テイオーのスタートは最も素晴らしいものでした。
そのまま2~3番手か?と思いきや、田原騎手は無理せずテイオーのペースに合わせて一旦スーッと下げるんです。
これが良かった。積極的に好位を取りに行くのではなく、事前の考え通り休み明けのテイオーを第一に考えたGoodJobです。
対してライバルとなるビワハヤヒデはいつものように好位を進みます。テイオーはそれを見る形で虎視眈々。レースは静かに流れていきます。
そして、向こう正面の坂を上り切った3コーナーから4コーナーへの下り坂。
テイオーは進路を確保しながらビワハヤヒデをきっちりマークして4コーナーへ差し掛かります。
いよいよ直線という、4コーナー出口。
2番手のビワハヤヒデが物凄い手応えで早々とメジロパーマーを捉えに掛かったおかげで、テイオーの前方進路が完全にクリアになりました。その瞬間、田原騎手はそこへ飛び込みビワハヤヒデの左後方に付けて直線を向く事ができました!
ビワハヤヒデは自分の形の競馬です。ここから他馬を突き放してゴールインするのが菊花賞でも見せた彼のパフォーマンスでした。
しかし!
中山の短い直線で、一完歩毎に逆にビワハヤヒデをかわしにかかる鹿毛の勇姿があります。
そうです。例のフットワークで明らかにビワハヤヒデ以上の手応えで猛進してくるのは、我らがトウカイテイオーでした!
異様な、本当に異様な程の盛り上がりを見せる中山競馬場のスタンド。
その超大歓声を払いのけるかの如く、フジTVの堺アナが叫びます!
『トウカイテイオーが来た!
トウカイテイオーが来た!!
トウカイテイオーが来たーーーっ!!!』
3回連呼では物足りない堺アナ!
ダービー馬の意地を見せるか!
トウカイテイオーだ!
トウカイテイオーだ!
奇跡の復活ーーっ!!』
あぁ。あぁっ…(T^T)
『一年ぶりのレースをっ!
制しました!!
…もうね。観て下さい。レースを。この実況を。
VTR音声でも、テイオーがビワをかわす部分でスタンドの歓声のボリュームが倍増するのがよくわかります。
今回は…でテイオーを買わなかった人も含め、歓声を上げずにはいられなかったんでしょう。
これがトウカイテイオー!
7冠馬シンボリルドルフの息子!
かくして一年ぶりのレースを劇的勝利で飾ったトウカイテイオー。
鞍上の田原騎手は、これほどの仕事をしてのけながらゴール後に大きなガッツポーズなどの派手なパフォーマンスをしませんでした。
そこには、彼なりの理由があったんです。
彼自身の勝利です
勝利ジョッキーインタビューは好きで必ず見ています。
レース同様、インタビューでも様々なドラマが語られてきました。
しかし、この時の田原騎手のインタビューほど真摯なホースマン魂を感じられるものはありません。
目に涙を浮かべながら、それがこぼれてしまわないようにずっと目線を上に向けて照れ隠しに笑顔を見せながら受け答えする田原騎手。
以下に抜粋します。
…驚きの方が先でね。
今日は本当にレース展開がどうのというより、トウカイテイオー彼自身がね…
色々なアクシデントがありましたからね。
それを克服してね、本当に今までの中央競馬の常識を覆すね、本当に彼自身の勝利です。
本当にすごい馬です。
とにかく一番気を付けたのはスタートで、去年のようなアクシデントが無いように、とにかく一番先にスタートを切ろうと思って。後はもう、とにかく相手がどうのというよりこの馬が2500mで一番能力が出せるようにと…それだけを考えて乗ったんですけどね。
もう、僕がどう乗ったこう乗ったよりもトウカイテイオー彼自身が本当によくここまで立ち直ってね、彼が本当に掴んだ勝利です。
直線の最後の100mはね、テイオーがんばってくれがんばってくれって本当に声を出してね、励ましながら追ったんですけども。かわした時はね、なんか嬉しいというより申し訳ないような、一年も本当に…大変…キツかったと思うんですけどね、本当に頭が下がります。ありがとうって、ゴールした時は思わず言ってしまいました。
(松元調教師には)もう本当にありがとうございましたと…さっきもね、なんで手を上げなかったとか、大きいパフォーマンスはとか言われたんですけど…一年もね、色々あって本当に…ここまでね、立て直した関係者の事を考えるとね、変なあの…手でも上げて、もしアクシデントで脚でもぶつけたらと思ってね、もうちょっと…できませんでした。
今聞いても、もらい泣きしてしまう田原騎手のこのインタビュー。
この後彼は真っ赤な目のままテイオーに再び跨り、誇り高く右手をまっすぐ天に向かって立てて関係者との記念撮影に臨んでいました。
色あせる事の無い感動。
これほど記憶に残るレースは他にありません。
出来事
そんな感動のレースですが、ひとつ面白い見所があります。
2枠2番のセキテイリュウオーが、3コーナーでパトロールタワーの影に驚いて飛び上がるというシーンをレース映像で見る事ができるんです。
冒頭の動画で言うと、3:16あたりですね。
3コーナー頂上から画面が切り替わる瞬間、後方集団のセキテイリュウオーがピョコンッと飛び上がる姿が確認できますよ。
彼はその後、このような事象の再発を防ぐ為にシャドーロールを着用する事となりました(笑)。まさに笑い話。
まぁ、馬も人もケガをしなくて良かったですね。
さて、今週の有馬記念。
中山の2500mに適性があるとは正直思えないアーモンドアイに、付け入る隙はあるのか?
絶好調のリスグラシューを含めた強力な牝馬勢に、牡馬たちはどう対抗するのか?
この素晴らしいメンバーが、また新たなドラマを見せてくれるでしょう。
今はあの世に行ってしまったトウカイテイオーも、きっと観戦するはずです。
父シンボリルドルフにブツブツ言われながら…(^^;)
ありがとう!